フィン空クラブ
ダグラス DC-2  青木英司

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【製作記】

ダグラスDC-2「ハンシン・ユッカ号」  MPM 1/72 

MPMより発売されていたDC-2のキットに、エッチング・レジンパーツが付いた限定版キットです。 ハンシンユッカ号の他にスペイン市民戦争で使われた機体のデカールが入っています。

DC-2には細かいバリエーションが多数あり、分かりやすいところでは垂直尾翼やアンテナ形状、排気管の取り付け位置など、それぞれ製作する場合に注意が必要です。資料としては4+publication 「Douglas DC-2」が72の図面も付いており大変参考になります。これによりますとハンシンユッカ号はシリアル1354、形式はDC-2-115E、元々はKLMオランダ航空PH-AKH『HAAN』という機体だったそうです。


◎胴体・主翼

浅めの筋彫りをニードル等を使って掘り起こしていきます。簡易インジェクションのキットは全体的にエッジなど甘い感じになっていますので、その辺りをシャープなるように仕上げて行きます。機首左舷、搭乗ドアの辺りの筋彫りが、右舷に比べて若干斜めになっていますので彫り直しました。主翼の筋彫り、翼端にかけて前の方に収束してしまっていますので瞬間接着剤で埋めた後、4+publicationの図面などを参考に彫り直しています。

修正後ペーパーで表面を平滑にし、リベットを打っていきます。市販の罫書き針の先端を少し平らに削った物を使っています。「ガイドライン」と言う透明の硬質テープを使い、デバイダーでリベットラインを部分的に罫書きしながら打っていきます。リベットラインは、4+publicationやウェブの写真を参考にしています。胴体は分かりやすいのですが、翼面は部分的にしか分からず、正確なものではないかもしれません。

機首のレジンパーツ、胴体側の断面よりも横方向がかなり小さめになってしまっています(ノーマル仕様の プラパーツも同じです)。左舷のバルジ、前方機銃搭載の為ライトが廃止され塞がれているのですが、ただの 膨らみになってしまっています。結局このパーツは使わず、不要部品になっている通常の機首パーツ(左右ラ イトがあるタイプ)の接着面中央をカッターで切り込みを入れて左右に押し広げ、クサビ形状のプラ版を入れて 胴体断面にあわせた後、接着・成形します。少々前方に伸びてしまっているライトの見切り(レンズ取り付け) 部を、写真など参考に削ります。左側は、パテを盛って形状を出します。機銃取り付け穴も写真を参考に位置 を出し、ピンバイスで開けておきます。銃身は真鍮パイプで、胴体各部支柱は真鍮線で作り変えます。

レジンパーツとなっている胴体上部の旋回機銃架リング、取り付けには実機と同じように穴を開けなければなりません。胴体をテープで仮組みしておき、後からまた同じ位置で組めるように合いマークを数箇所入れておきます。ノギスでパーツの直径を測り、開口部をコンパスで罫書きします。カッターなどで開口し、丸めたペーパーでレジンパーツとの合わせを見ながら成形します。前方に付く風防は塩ビ製のものが二つ入っています。今回はそのまま使っていますが、実機はもう少し背が低く、横に広い形状の様です。傷を付けないように切り離し・胴体との合わせ・成形、機体色で塗装します。胴体を塗装した後、クリアーボンドで接着しています。

機銃は本体・ドラムマガジンと銃身・エッチングの照星、そして機銃架と細かく分かれていますが、レジンパーツは合いも良く、すんなり組む事が出来ます。

銃座(台座)は、実物は骨組みになっています(4+publicationの66頁に内部写真があります) パーツにモールドはありますがレジンの無垢です。爆撃機タイプでは窓から殆ど見えませんのでそのまま使っています。冬戦争の後に使われた輸送機仕様の窓にする場合は内部が見えますので、作り直すと良いでしょう。

風防・横窓と客席窓はインジェクションパーツになっています。客席窓は少々のすり合わせでハメ込む事が出来ました。爆撃機タイプでは塞がれた状態(小窓が付いている)になっていますので、小窓部分にマスキングテープを貼っておきます。風防は機体側と若干合いが悪いですので胴体を張り合わせた後、慎重に合わせ仮組みを行います。接着前にマスキングを先に行っておきます。。


◎カウリング・エンジン周り

エンジンは少々形状が甘いので、クイックブースト製のサイクロンエンジンにj交換、プッシュロッドを 真鍮線で追加します。シャフト部に1.5ミリの真鍮パイプを植え込み、プロぺラハブの軸を作ります。 プロぺラハブとスピナーは一体になったものがレジンパーツで入っています。シャフト部をカットし、 1ミリのステンレスパイプに置き換えます。ハブとプロぺラにも0.5ミリ穴を開け真鍮線で繋いでいます。

カウリングはリベットを打った後に前後の肉厚を薄く削っておきます。上部にエアダクトのパーツがあり 、カウリング表面に接着するようになっていますが、実機は中からダクトがカウリングの開口部を通って 外へ出ているので、その部分に穴を開け、中でダクトを固定出来るように加工します。

排気管は左右ナセルの左側から出ていますが、取り付け位置には筋彫りがあるだけです。この筋彫りも位置がずれていますので写真や図面を参考に排気管出口を罫書き・開口し、レジン製の排気管を取り付けます。


◎塗装、マーキング・デカール

資料によっては明るいグレーだったり、ライトブルーグレーやねずみ色だったりとハッキリ分かりませんが、今回は自分のイメージで塗ってみました。下地にブラックグレーを吹き、ニュートラルグレーにホワイトを混ぜて明るくしたものをパネル毎に吹く感じで塗っていきます。その上から更に明るくした色を全体の明度を上げ、最初に吹き付けた時に出来た明暗を和らげる感じに仕上げました。

デカール、初期のグレー塗装とフィンランド迷彩の要人輸送機タイプが入っています。初期タイプにする場合、残念ながらこの機体に描かれているハカリスティの大きさに合うものが入っていませんので、TECHMOD製のハカリスティ・デカールセットから合うものを選び、サークルのみを塗装しデカールからハカリスティを切り離して貼り付けています。

機体番号「DC-1」、時間が無く今回はそのまま使いましたが少々大きめな様です。それに合わせた為ハカリスティも大きめになっています。 デカールを乾燥させ、クリアーを吹きペーパーで段差を整えた後、半艶クリアーを吹き付け付属部品を取り付けて完成です。

72と言っても結構な大きさですのでナカナカ難しいかもしれませんが、いずれはHAAN号から始まってフィン空迷彩(メルス受領の際、エースパイロットをドイツまで輸送するなど重要な活躍をしています)・戦後塗装、そして退役後のカフェレストランまで、ハンシンユッカの生き様?を表現してみたいです。

参考資料
◎4+publication Douglas DC-2
◎Suomen Ilmailuhistoriallinen Lehti 4/1994
◎SUOMEN ILMAVOIMAT 1928-40
◎MGビデオ「フィンランド航空戦」


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